創作は時代を越えて広がる

フロム・ビヨンドを観ました。
脳の松果体を刺激する装置を作った科学者が異世界へ行き次々と問題を起こす話です。

異世界が脳の変化で受容できるようになるという設定が面白いし、もし実際に異形の魚や化け物が見えないだけで存在しているのかと思うと少し怖くなりました。
クロフォード(物理学者)ジェフリー・コムズ
キャサリン(精神科医か心理学者)バーバラ・クランプトン
ブラウンリー(巡査部長)ケン・フォリー
この3人がメインの登場人物で、キャサリンはダメー!と止めたくなるおバカな行動を続ける役で、他の二人がキャサリンを止めようとして巻き込まれてしまいます。

設定は突拍子も無いように感じる内容ですが演技が素晴らしく何の違和感も無く世界に入り込めました。

フロム・ビヨンドの原作はラヴクラフトの短編小説なので原作の内容は映画の序盤で終了します。続きの脚本は監督がラヴクラフトの作品から抜粋してアレンジを加え再構成したものだそうです。

ラヴクラフトの原作に直接的な性描写は無いのですが、映画フロム・ビヨンドでは性的な描写が多いです。

映画で性的な描写が多いのはスチュアート・ゴードン監督曰くラヴクラフトの作品に女性は登場しないが、性的な要素は多く含まれているそうです。インスマウスの影で描かれる遺伝の意味を考えると性的なイメージがラヴクラフトの作品から伝わってくる。とインタビューで答えていて、なるほどなと思いました。

同じ原作を読んでも人によって感じ方が違うのだな。と感じました。

作品は人によって与える印象が違ったりします。その印象の違いが新しい作品を作るきっかけになって新たな作品が生まれるんだなと思いました。

ラヴクラフトが愛されているのは人によって受け取り方が違っても、それを受け入れられる世界自体を創ったことにあるのかなと思いました。世界観に後進が続いて今のクトゥルフ神話が形作られています。でもラヴクラフト自身はこの世界の広がりを見る前に亡くなってしまいました。

書いているうちに「作品を世に出すと作者を離れて評価される。」と以前聞いた誰かの言葉を思い出しました。今になってこの言葉の意味を理解できた気がします。

作者を離れて再評価されるのが創作の面白いところですし宿命ですね。ただ、これだけ現代に愛される作家になっているとラヴクラフト本人に伝えられないのが少し残念です。

ブルーレイの特典では監督が作品について語っています。
当時の上映版では審査を通すために力の入ったシーンがカットしなければならなかったそうです。このブルーレイではそのカットシーンを元に戻して監督の当時出したかった内容になったそうです。面白かったです。